欧州中銀0.25%上げ
欧州中央銀行(ECB)は5日、政策金利の0.25%引き上げを決めたが、市場では2007年以降の金融政策運営がどうなるかが焦点となっています。米景気の減速や原油高が一服したことから12月の追加利上げで打ち止めとの見方も多かったが、トリシェ欧州中銀総裁は物価上昇に厳しい目配りすることを表明。対円で最高値圏にあるユーロ相場への警戒も必要な状況。
トリシェ総裁は5日の定例理事会後の記者会見で「利上げの後でも政策金利は低水準にある」と明言。物価安定の動きを「非常に注意深く監視する」と述べ、景気拡大が確認されれば利上げを続ける姿勢を示した。
5日の利上げ決定の背景には予想以上に力強いユーロ圏景気がある。域内総生産(GDP)は06年前半に年率換算で実質3%台の伸びで、年後半も勢いを持続している。通貨供給量(M3、マネーサプライ)は前年比で約8%。12月の再利上げ説が定着しているのはこのためです。
市場の関心はその先の07年以降の欧州中銀の動きに移っている。米景気は一時の勢いを失い、欧州ではドイツの付加価値税増税などもありユーロ圏景気に減速の兆しがある。
最近の原油安で9月のユーロ圏消費者物価上昇率は前年同月比の速報値で1.8%と前の月から0.5ポイントも下がり、2年半ぶりの低さを示した。だがトリシェ総裁は「1年前の原油高の反動と最近の原油安が組み合わさった結果だ」と述べ、07年にかけてインフレ率が再び物価安定の目安とする2%を超すとの見方を強調。
5日の理事会前、金融市場では12月の「あと1回」で欧州中銀が利上げを小休止するとの観測が有力だった。総裁はインフレ圧力の監視に軸足を置く姿勢を変えなかったが、07年に利上げが続くかどうか、市場関係者の見方は割れている。
その際、焦点になるのがユーロ相場。昨年12月に利上げに転じて以来、対円で1ユーロ=141円だったユーロ相場は150円前後の最高値圏に上昇。対ドルでも1ユーロ=1.17ドルから1.27ドル前後に上昇している。
トリシェ総裁は9月中旬にシンガポールで円・ユーロ相場について「日本の景気回復を反映すべきだ」と述べてユーロ高をけん制したが、5日の会見でも「その見解を維持する」と述べた。
■英中銀据え置き
英中央銀行イングランド銀行は5日、10月の金融政策委員会を開き、政策金利(レポレート)を現行の年4.75%に据え置くことを決めた。8月に1年ぶりに0.25%引き上げた後、2カ月連続で据え置いた。金融市場では「年内に再び金利を引き上げる」との観測が根強い。
■市場関係者の見方
◎来年も利上げ続ける可能性/ミヒャエル・シューベルト独コメルツ銀行エコノミスト
市場は次回12月の利上げを織り込んでいる。トリシェ総裁も5日の記者会見で「(市場の見方に)反論したくない」と述べ、12月の利上げを示唆した。不透明なのは2007年の政策運営だ。総裁が原油安にもかかわらず景気や物価の従来見通しを維持し、物価上昇のリスクが「明確だ」と強調したことに驚いた。
欧州中銀は07年には利上げをしないとみていたが、会見を聞くと、利上げを続ける可能性も排除できない。ユーロ相場が日米との金利差から上昇に動くリスクは今のところないが、利上げが続けばその懸念も浮上してくる。
◎今後の焦点は米景気の減速/ポール・マケル英HSBC通貨戦略ディレクター
欧州ではインフレ懸念が根強いため欧州中銀は12月に再び0.25%引き上げるだろう。今回金利を据え置いた英中銀は11月に利上げを実施するとみている。両中銀にとって今回の金融引き締め局面で最後の利上げになる。
すでにこうした予測は為替相場に織り込まれており、外為市場は以前のように日米欧の金利格差に反応して動く展開にはならない。今後の焦点は米景気の減速ペース。米国は来年前半に金融緩和に転じるとみている。